徹底解説!鍛冶屋のお仕事(2) 包丁鍛冶職人
継承されてきた伝統の技術
現代でも人気の高い鍛冶職人の仕事の一つがこの包丁鍛冶と言われています。鍛冶職人が手掛けた和包丁はその切れ味と断面の美しさが評価されていて、日本国内だけでなく、海外のプロフェッショナル達からも高い支持を得ています。
包丁の種類と仕事内容
実は包丁鍛冶職人が手掛ける和包丁には2種類ある事をご存知でしょうか。「打刃物(うちはもの)」と「抜刃物(ぬきはもの)」という二つの製法で作られるものがあり、どちらも違う時代に違う製法で確立されたものです。
打刃物(うちはもの):世間一般的な鍛冶師のイメージにも近い、日本刀の製法をルーツとした刃物で、江戸時代末期に完成された手法と言われています。鋼と鉄を高温で熱し、金槌などで打って形成していきます。
作業工程はほぼ全て手作業で行われ、その数は全部で30以上あると言われています。おおまかに分けても、材料の切り出しから始め、鋼と鉄を一体化させる「鍛接」、打ち鍛える「鍛造」、荒仕上げ、焼入れ、錆止めなど、数々の工程を経る必要があります。ちなみに現代では叩いて鍛え上げる工程では機械式の金槌を使用し、グラインダーを研磨時に使用する事が多く、各工程をそれぞれ専門の職人が分業して行っています。
抜刃物(ぬきはもの):昭和後期に登場した製法で、利器材という鋼と鉄が一体となった材料を用いるのが特徴です。工機を使用して包丁の形にくり抜き、その後の研磨や刃付け作業を職人の手で行うので、全てが手作業の打刃物と違ってより効率的に包丁を生産する事が可能となっています。
この製法の登場当時は利器材の質が悪かったため世間からは粗悪品というイメージを持たれていましたが、生産技術と利器材の質があがるにつれて、出来上がる包丁の品質も上がっていきました。現在一般家庭で使われている包丁の多くは工場で大量生産された抜刃物よりの物が多いと言えます。
後継者不足?包丁鍛冶を目指すには
包丁鍛冶の仕事に就くには、師匠となる職人のもとに弟子入りし、技術を学んでいくのが基本となっています。一人前とよべるレベルに達するまでには平均で5年から10年程かかると言われており、簡単になれるものではないという事がうかがえます。しかし、学歴や経歴は関係なく、他業界から転職して鍛冶職人になった人もいるくらいなので、必要なのは根気とやる気、そして熱意ではないでしょうか。
とはいえ、包丁鍛冶の工房が減少している今、工房側も弟子をとって育てる経済的余裕や時間的猶予(高齢化)が無いもの事実で、弟子入り先を探すのも一苦労かもしれません。まずは鍛冶で有名な産地の鍛冶組合に問い合わせをする所からが第一歩となります。
まとめ
鍛冶職人の一つ、包丁鍛冶の概要や仕事内容、その目指し方について解説させていただきました。工業化が進む現代、どうしても手作業の多い鍛冶職というのは大量生産に向かず、工房も少なくなっている一方ですが、後世に残すべく継承されてきた技術を絶やさないためにも、興味のある方はもっと深く調べてみるのも良いかもしれません。