一人親方は厚生年金に加入できない?老後を考える
日本の年金は、国民年金と厚生年金の2種類があります。企業に属している場合、給料から厚生年金保険料が天引きされますが、一人親方は事業主なので厚生年金に加入することが出来ません。国民年金にしか加入の出来ない一人親方は老後の心配が出てくることでしょう。今回は、一人親方の年金について解説していきます。
国民年金と厚生年金とは
国民年金とは、日本に住んでいる20歳から60歳未満のすべての人が加入する公的年金のことをいいます。「基礎年金」という言い方をされることもあります。
老後に年金をもらうために加入するものと考えている人も多いようですが、そもそも日本の公的年金制度は、老後の暮らしをはじめ、事故などで障害を負ったときや、家計を支える一家の働き手が亡くなったときに、「年金」という経済的な給付を通してみんなの暮らしを支え合うという考えのもとに作られた制度です。
年金はシニア層の人たちがもらうだけでなく、学生・現役世代の人たちでも、もし病気やケガで一定の障害状態になってしまって年金をもらうケースもあるのです。
とはいえ、そもそも年金制度に加入して、年金保険料を納めていなければ、老後はもちろん、もしもの時の年金給付は受けられません。国民年金への加入手続きや保険料納付についてきちんと知っておきましょう。
冒頭で、国民年金は「20歳から60歳未満のすべての人が加入する」と述べましたが、実は加入の仕方や、保険料額、保険料の納付方法など、厳密に言えば働き方などで違っていきます。
厚生年金とは、日本における公的年金のひとつで、会社員など企業に勤めている人が加入する年金制度です。国民年金に上乗せする形で保障されており、毎月の保険料は会社と従業員が折半して支払います。
生年金にはすべての従業員が加入できるわけではなく、加入できるのは「70歳未満で常時雇用されている人」と決められています。
なお、国民年金の加入は20歳からと義務付けられていますが、厚生年金は企業に勤めはじめたときから加入できるので、たとえば16歳から常時雇用される人は16歳から加入することが可能です。
また、条件を満たせば外国人労働者であっても加入することができます。
一人親方は国民年金で
一般的なイメージに国民年金よりも厚生年金の方がいいとされていますが、実はそうではありません。というのも厚生年金は、会社と個人の折半で支払いますが、受給金額はこの支払総額よりも少ないのです。
国民年金は仕組みとして、支払いは個人の自由であるのにも関わらず、支払う人が一定数いることからも必ず受給できるとされます。
しかし老後を考えると国民年金の受給だけでは不安ですよね。そういった人には年金の代わりになるものに加入をおすすめします。
年金の代わりになる保険
個人事業主は公的年金がない代わりに、どんな保険に加入しても自由です。
支払った金額より少ない金額しか受給できない厚生年金は諦めて、支払うはずだった保険料で、個人で準備できる年金に加入しましょう。
・国民年金基金
・個人型確定拠出年金
・民間個人年金
それぞれの特徴について触れておきます。
【国民年金基金】
国民年金基金は厚生年金を受け取れない個人事業主が、国民年金のみでは生活できないためにできたものです。
国民年金の任意加入をしていなくても、国民年金基金に加入できます。
国民年金基金と国民年金の名前は似ていますが別物で、20歳から60歳までの日本国民が加入できます。
65歳から受け取る事ができ、終身年金が基本となっています。
特徴として老後に受け取れる金額が加入時にわかる、掛け金が一定である、掛け金が全額控除という3つの特徴があります。
【個人型確定拠出年金】
個人型確定拠出年金は掛け金を毎月調整しながら、積み立てて行く自由が効く年金です。
これも20歳から60歳までの日本国民が加入できます。
特徴は、自由度が高い点が挙げられます。
積み立ては5000円以上で、1000円刻みで自由に選べます。受け取り方法は「一括受け取り」「5年〜20年の分割受け取り」「一部を一時受け取りし、残りを分割受け取り」の3種類の方法があり、自由に選択できます。このように積み立ても、受け取りも自由度が高いのが特徴です。
さらに税制上の優遇があり、全額控除はもちろんのこと、運用での利益も非課税。
国民年金基金と反対とも言える属性を持っていて、国民年金基金は確実に受け取れる金額がわかりますが自由度はありません。
それに対し個人確定型拠出年金は受け取れる金額は保証されませんが自由度が高い。
金額に限度があり、国民年金基金と個人確定型拠出年金の積み立て額が合わせて68000円/月までとなっている点には注意が必要です。
【民間個人年金】
最後に紹介するのが、民間保険会社が運営する個人年金です。
各会社が運営しているため、内容はざまざま。
預貯金に比べてリターンは大きくなります。そして生命保険の形を取っているので、途中で亡くなってしまったとしても保険金が入ります。さらに生命保険控除が受けられるので、税制上も有利です。
国民年金をはじめ、国民年金基金、個人型確定拠出年金をメインにして、さらに老後の準備をしておきたい場合に考えてみましょう。
一人親方は退職金を用意するべき?
とはいっても年金だけでは老後の心配はつきません。ここでは、一人親方が退職金を受け取る方法を紹介します。退職金と言っても一人親方の場合は、事前に積み立てて置いたものをまとめて受け取る方法です。2つ紹介します。
【小規模企業共済】
一人親方が加入できる退職金制度の一つが小規模企業共済です。小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する退職金制度です。
小規模企業の個人事業主や共同経営者などが退職後も安定した生活を送れるようにするための共催となっています。小規模企業共済への掛金は全額所得控除できるのが大きな特徴で、高い節税効果があります。
掛金は月々1,000円から7万円と幅広く、一人親方の収入に合わせて決定できるのもうれしいポイントです。さらに、収入の増減に合わせて掛け金の金額を変えることができます。
収入が増える時期は掛金を増やし、より多くの退職金を受け取れるようにできるでしょう。一方で収入が減ってしまった場合には、掛金を減らして当面の生活費を増やすこともできます。
自分がどの程度の退職金を受け取れるのか、どの程度所得税や住民税を節約できるのかについては、中小機構の公式ホームページで試算できます。
もらえる時期ですが一人親方の場合はその仕事を廃業とした時期とされています。
【建設業退職金共済】
一人親方が加入できる別の退職金制度が、建設業退職金共済です。民間の退職金制度とは異なり、国が創設し国が定めた基準で退職金が計算されるため、確実に支払われるというメリットがあります。
さらに別の会社に勤務していて独立した場合にも、建設業界で働き続ける限り加入し続けられるのもメリットです。通常一人親方だけでは加入ができないのですが、一人親方が集まって任意組合を作れば加入可能です。
組合に加入し共済手帳の交付を受けとり、働いた日に共済証紙をもらって貼ることにより掛金を納めたことになります。
一方、掛金の上限が1日あたり320円と低く、退職金の金額もやや少ないのがデメリットといえます。
ちなみに、この共済証紙の費用は一人親方が自ら負担します。そのため経費とはなりません。小規模企業共済のように所得控除にもなりません。この点は注意が必要です。
まとめ
以上、一人親方が厚生年金に加入出来ないこと、おすすめの退職金制度を紹介しました。
この他にも老後に備える方法は存在しますので、事前準備をしっかりと行いましょう。